第10章

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彼女はいつも「成長したい」と踏み出して、 「力になりたい」と努力していた。 彼女のことを考える時、後悔が一緒に浮かんでは沈んでいく。 こうすれば良かった。 ああすれば良かった、と。 おばさんの言うことを聞いて、もっと早く彼女の店に行けば良かった。 そうすれば、もっと早く出会えたかもしれない。 彼女の部屋に行った日。 「妹みたい」なんて、言わなければ良かった。 そうしたら、もっと素直になれたかもしれない。 高槻と付き合い始めたと勝手に勘違いした時、 素直に、佐藤さんの気持ちを聞けば良かった。 そうしたら、やけになることもなかった。 いいかげんな気持ちで、三浦さんと付き合わなければ良かった。 そうすれば、三浦さんを振り回して傷付けることもなかった。 退団する時、彼女になにも伝えず、消えなければ良かった。 すべて言えていたら……。 昨日、あの時、彼女を追えば良かった。 そうしたら、空港に行くことはなかったかもしれない。 もっと……もっと早く……自分から、好きだと言えば良かった。 そうしたら、彼女はとなりにいてくれたかもしれない。
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