第4章

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食事を終え、マンションの前で車を停める。 「ありがとうございました」 三浦さんは、いつもの笑顔でお礼を言いながら車を降りたが、ドアを開けたまま止まった。 「どうかした?」 いつも真っ直ぐに俺を見る三浦さんが、視線を外して言った。 「あの……もしよかったら、お茶でも飲んでいきませんか?」 突然のことに……思考が停止する。 彼氏彼女の関係なら、考えていてもおかしくない展開だ。 ……子供じゃない。 この誘いに乗れば、どうなるかぐらいは、恋愛に疎い俺でもわかる。 「……明日もあるから、今日はやめておくよ」 少し、肩が落ちたのがわかる。 「そうですよね……ごめんなさい。 練習、頑張ってください」 閉まったドアの向こうで、彼女はいつも通りの笑顔で手を振った。 痛い。 そして、苦しい。 思わず、アクセルを踏む足に力が入った。
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