第10章

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池田 圭吾 * どこを探しても、彼女の姿はなかった。 ついさっきまで会い辛い、会いたくないと思っていたにも関わらず、彼女の行方をクラブスタッフに聞き回る。 「今日は休むとしか聞いてないよ」 チームスタッフの言葉は、とりあえず俺を落ち着かせた。 練習の合間。 休憩に入ったところで、ケータイを手に取る。 画面を見ると、メールが一件入っていた。 差し出し人は高槻。 「こんにちは。 昨日はああ言いましたが、ダメ元で実加ちゃんにドイツへ一緒に来てくれるようお願いしました。 先輩、実加ちゃんになんかしました? 予想外の返事で驚きましたが、今ふたりで空港にいます。 黙っていようかとも思いましたが、一応報告です。 また帰って来たら遊んでください」 景色の色が変わった気がした。 思わずケータイを握る手に力が入る。 ……あいつ……。 「体調悪いので早退します」 近場にいたスタッフに告げ、グラウンドを後にした。
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