第2章

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テレビの中では、今日の練習試合での得点シーンが流れていた。 画面に映る自分を、昔の自分と重ねる。 すると、今の自分のほうがいいような気がするから不思議だ。 年齢を重ね、サッカー選手のピークと言われる年齢はとうに過ぎたのに。 まだ、自分には可能性があることが、これ以上ないほど嬉しかった。 諦めかけたから、余計にそう感じるのかもな。 「さっさと試合出て来てくださいよ。 練習試合じゃなくて、こっちのに」 10番のエースナンバーを背負う日本代表が、待ちくたびれたとばかりに文句を言う。 「言われなくても、そろそろ出るよ」 「そうしてください。 先輩がいないと、俺のアシストが増えないんで」 俺じゃなくてもアシストはつくだろうに、憲司(ケンジ)は嫌味ったらしく言い放った。 これが、あいつなりの激励なのはわかってる。 俺だって、このままでいいとは思っていない。 彼女がくれたチャンス。 なにがなんでも、ものにしてやる。
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