第2章

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どうせ呼ぶならホーム。 そして、見応えのある試合で、俺の姿を見せたいと考えていた。 しかし、今シーズンの俺は練習試合で使われても、リーグ戦では使われていない。 正直、監督が俺をいつ使うかなんてわからない。 だけど、俺が監督なら……次の試合だ。 相手チームとの相性も昔からいいし、なにより今の俺は絶好調だ。 ……でも、呼んでも使ってもらえなかったら、最悪だな。 そんなことを考えながら、チケットの手配をしようと電話を手にした。 * 入場すると、限界まで上げられた歓声が耳に届く。 たった一歩。 緑色の芝生を踏んだだけで、込み上げてくるものがある。 久しぶりのピッチからの風景に、 「おかえりー!!」 叫ぶような、サポーターの優しい言葉。 ほとんどが水色に染まったスタンドが、優しく俺を迎えてくれる。 「泣いてる場合じゃないですよ。 今までサボってた分、今日はしっかり働いてもらいますからね」 言いながら憲司が背中を軽く叩いて行った。 大きく、深呼吸して、ホーム側のスタンドを見た。 ……来てくれないかもしれないと、渡す直前まで手が震えていたのは秘密、だ。 カッコよくなくても、泥臭くても、なんでもいい。 今日は点を取るぞ。
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