第3章

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「俺、これでもCMとかにも出てるのにな。 ちなみに、佐藤さんが見に来てたその試合にも俺は出てるからね」 え? あの試合に? 思い出そうとするが、浮かんでくるのは彼の姿ばかり。 特に、得点を決めたシーンが……あ……。 思い出した! 「池田さんにパス出した人!」 堪え切れないと言わんばかりに、高槻さんが吹き出して笑う。 「なに、その覚え方。 まぁ合ってるけどさぁ~」 「ご、ごめんなさい」 慌てて頭を下げる。 「いい、いい、気にしないで」 つい、失礼な言い方になってしまった。 でも、他にサッカー選手としての高槻さんのことを私は知らない。 こんなことなら、もうちょっと勉強しとくんだった。 「ということは、先輩って池田さんのことですか?」 「正解」 そういうこと、か。 池田さんが私を紹介してくれたんだ。 「とりあえず、マッサージお願いしていい?」 「は、はい。 もちろんです」 横になった身体に、タオルを掛ける。 触れた手に、いつもとは違う感触が広がった。 ……なに? 彼ともちがう、感触。 でも、明らかに普段とはちがう。
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