1132人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
勘弁して欲しい……。
此処のところ、よく私物が無くなって困っている。
シャーペンやノート、ペットボトルはまだ良い。
消耗品だし。
――水泳キャップまで無くなるなよ。
お陰で合同練習では、向こうの高校の名前入りの予備を借りて恥かいたじゃん。
「十夜(とおや)、眠いのか?」
浅黒く日焼けした眼光鋭い親友の夏樹(なつき)が俺の顔を覗き込む。
「……うん」
電車のつり革に掴まりながら、俺は練習で疲れたからうとうと半分夢の中だ。
それを夏樹が心配げに見守る。
「次から人が多くなるから寝たら迷惑かかるぞ」
「――うん」
100メートルプールについはしゃいでしまった。
なんで泳いだ後って眠くなるんだろ。
うん、しか言わない俺に夏樹は溜め息を吐く。
夏樹の心配は的中し次の駅で人がいっぱい乗ってきた。
冷房が効いていた電車内が急にもわっと熱気に包まれる。
最初のコメントを投稿しよう!