真夏とキスと眠り姫。

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勘弁して欲しい……。 此処のところ、よく私物が無くなって困っている。 シャーペンやノート、ペットボトルはまだ良い。 消耗品だし。 ――水泳キャップまで無くなるなよ。 お陰で合同練習では、向こうの高校の名前入りの予備を借りて恥かいたじゃん。 「十夜(とおや)、眠いのか?」 浅黒く日焼けした眼光鋭い親友の夏樹(なつき)が俺の顔を覗き込む。 「……うん」 電車のつり革に掴まりながら、俺は練習で疲れたからうとうと半分夢の中だ。 それを夏樹が心配げに見守る。 「次から人が多くなるから寝たら迷惑かかるぞ」 「――うん」 100メートルプールについはしゃいでしまった。 なんで泳いだ後って眠くなるんだろ。 うん、しか言わない俺に夏樹は溜め息を吐く。 夏樹の心配は的中し次の駅で人がいっぱい乗ってきた。 冷房が効いていた電車内が急にもわっと熱気に包まれる。
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