-1- 慎一郎 十三歳

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 一筋、 流す涙と共に 「ごめんなさい」  と続けた。  自分の『家族』が、 世間一般の家庭とは懸け離れている『普通』を生きているのは重々承知していた。  母の破天荒な性格といい、 派手な生き方といい、 どこに平凡な要素があるというのか。  けれど、 彼女は元々が家庭的で、 友人(女性ばかりだった)も多く、 ひっきりなしに人が出入りしていた。 社交性はあるが社会性は少し足りない、 職を持って社会的地位を築くよりは家庭入って内助の功を発揮するタイプだった。 適職は一般主婦以外あり得なかったろう。 家庭を守り、 子供を慈しみ、 夫に愛される、 愛すべきかわいい女性。 きっとそうなれた筈なのに、 選び、 愛され、 愛した男には家庭があった。 妻も子もあった。
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