-1- 慎一郎 十三歳

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 多分、 社会通念上、 許されないことだからという倫理感より、 慎一郎の父である『夫』を愛するだけで良かったのだろう。 『二号』『妾』と呼ばれることなど何とも思わなかったはずだ。 後ろ指指されることも、 きっと。  が、 慎一郎に対しては、 すまなさや後ろめたさがあった。 決して人には詫びたりしない母の「ごめんなさい」は、 心は動かされないけれど、 嘘のない言葉として慎一郎の中に染みていった。
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