-1- 慎一郎 十三歳

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 父・尾上慎は、 他の家庭の家長とは思えない頻度で慎一郎と茉莉花親子と暮らしていたし、 不足もなく不満もなく、 遠慮ない愛情を受けていたと断言できた。  父には山程褒められ、 叱られ、 投げ飛ばされた(文字通りの意味で、 合気道の稽古と称することもあり、 叱られる過程で張り飛ばされる事も度々だった)。 過度に優しかったり厳しいこともなく、 導く『父』は紛れもない彼の親だった。  幸せな家庭だった。 これ以上を望んだら何を得られるというのだ。 「帰ってくるなり子供を羽田空港へ引っ張って行って、 海外へ連れ出す家庭のどこが平凡なんだよ」
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