-1- 慎一郎 十三歳

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 お母さん、 謝らないで、 僕は今のままで充分なんだ、 と子供らしく言えればよいのに、 と子供心に慎一郎は思う。  しかし、 低学年ながら、 父の影響もあって同学年の子より弁が立つ方だった彼は、 父の口調を真似るように小賢しく言った。  ほう、 と母は溜息を一つ。 「慎一郎君、 お父様に言い方がそっくり」 「仕方ないじゃないか、 親子なんだから」  何気なく返した言葉に、 自分でも驚く。  そう、 僕達は家族だ、 世間はどう思うかわからない、 けど、 自分たちにはこれが平凡で幸せな関係。  世間一般と比べる意味などあるものか。
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