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「どうしようかしらね」
ふたりは肩を抱きながら、
シャチ談義に花を咲かせた。
先ほどのシリアスな話は微塵もさせず。
自分は庶子とわかっただけで充分だったし、
母と息子の間では解決ついた問題だった。
何も変わりなく、
昨日と同じ日々を明日も暮らしていける。
母との生活は刺激的で穏やかで、
楽しいものだったから、
不満はなかったのだ。
母が病気で喪われるまでの間、
慎一郎は幸せだった。
後日談だが、
母はシャチを見に行く、
を本当に実行し、
息子の意見を尊重してひと夏をカナダで過ごした。
父も途中で合流し、
バイカラーのオルカを堪能し、
彼らの狩りに戦慄した。
これが母と親子三人過ごした、
最初で最後の海外での遠出となった。
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