146人が本棚に入れています
本棚に追加
【3】 母
父との出会いはいつ、
どこで、
どのような場であったのか。
馴れ初めを子供に語れない家庭だった。
いくら聞いても、
こればかりは聞き出せず、
ふたりから「秘密」とはぐらかされたが、
子供だから興味がある。
父母どちらも「あっちが一方的に好きになった」と言い張った。
異口同音に、
ふたりとも「正しいことだったから」と断言した。
避けようのないことだったのだろう。
ただ、
これまたふたりとも、
父に妻子があったことを残念に思っていた。
ふたりの関係の結果産まれた自分としては、
両親の存在は否定できない。
しかしながら、
慎一郎の女性観に少なからぬ影響は与えた。
後年、
彼は後腐れのない恋をすることはあっても、
ステディな関係はまったく考えたことはない青年期を過ごした。
最初のコメントを投稿しよう!