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あの美しい女に会いたい。
自分だけの彼女、
いつか会えるだろうか。
彼女が欲しい――
自ら望んだ初めての絶頂はとても悦いものだった。
同日の夕べ、
普段の朗らかで紳士然とした父と、
華やかな母と食卓を囲んだ。
先刻の媚態は微塵も感じさせず、
時折冗談を交えながら歓談する二人といつものように話に加わりながら、
昨日とは世界が、
見るものが変わってしまった自分を、
慎一郎は感じた。
自分は、
いつか、
彼女に逢う。
探し、
訪ねあてる。
そして、
愛し合って、
そして、
その時、
自分は何を得る?
答えの出ない問いがあることを知った、
慎一郎、
十三歳だった。
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