-1- 慎一郎 十三歳

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「イチゴウの子じゃないってことよ」  普段から笑みと淑やかさを失わない母の言い方は普段通りだったので、 「ふーん」と返したきり、 その日の話題はそれ以上広がることはなかった。  母は菓子作りの名人で、 そこらのパティシェが裸足で逃げ出すような見事な腕前だったので、 何よりもおやつを食べたくて仕方がなかった彼は、 テーブルに並ぶお菓子の方に心を奪われていたからだった。
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