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「俺はお前を弟とは認めない」
これが妻帯者である兄の、
弟への今後の対応を象徴していた。
疎ましくてならないと言うように再度拳を振るい、
さすがに三発目は第三者に止められたが、
親族はただ見ているだけだった。
簡単に受け入れてもらえるとは思っていなかった慎一郎も、
少なからぬショックを受けた。
殴られながら、
顔は似ても似つかない『兄』の声音や口調が、
父にそっくりなのには参った。
いやでも兄弟を意識してしまって辛かった。
通夜や葬儀には参列させてやる、
という本家の人間の風当たりを、
和らげてくれる人がいたことは慎一郎にとって救いだった。
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