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母と海外へ出る機会の多さも手伝って、
民間機のパイロットになることを将来の目標としていた。
「慎一郎君が初飛行する時は、
私、
ファーストクラスで乗り込むわ」
よく母は言ったものだ。
「断るよ」
慎一郎はバッサリ。
「どうして? いいじゃないの、
家族枠で安くしてくれるんでしょ?」
ファーストクラスを選ぶ人間が値引きしろときた。
「操縦席へ入れろってうるさく言うのがわかっているのに、
いいよ、
って言うと思うの?」
「あら、
だめなの」
「だめ、
絶対」
「つまらないわ」
母は頬を膨らませる。
「父さんは別だけどね」
「不公平だわ!」
母はおかんむりだった。
父はふたりの様子を眺め、
嬉しそうに目を細める。
この人は、
息子と妻の会話を見聞きするのがとにかく好きだった。
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