-1- 慎一郎 十三歳 #2

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 母の時にも感じたが、 生きている人間は彼らの思いに引きずられてしまう。  背景に、 長男である腹違いの兄が、 まったく畑違いの世界で身を立てたため、 後を託する人間として慎一郎を頼ったのだった。 教授職が世襲性などと聞いたこともない。 が、 父はそれなりに名の知られた人物だったので、 彼の望みもわからないでもなかった。 尾上姓を名乗らせたいのも、 母を迎えられなかったことをせめて自分には、 という思いが伺えた。  さようなら、 僕の夢。  瞬時に頭に浮かんだのは夢への決別。 父には承諾の意を伝えた。
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