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【6】 別れと出会い
慎一郎が尾上家へ行く決意をしてからの父の動きは早かった。
病床の中にありながら、
可能な限りの手を尽くして息子を守ろうとする力を感じ、
それが勢いを失っていくのを肌で感じ取れて、
切なかった。
もちろん、
尾上の本家は諸手を挙げて反対した。
本妻は存在そのものを認めない。
兄は完全に拒否をした。
その他の血族は本妻筋の人ばかりだったから、
ほぼ彼女に倣う。
そんな彼らでも、
慎一郎をひと目見るなり押し黙ってしまう。
青年期に足を踏み入れたばかりの彼は、
日本人の規格を遙かに越えた長身、
利発さが勝る知的な瞳、
端正で整ってはいるが明らかに男性美の宿る目鼻立ち、
そして声。
声と口調だけは血を争えない。
あまりにも慎に生き写しすぎて言葉を失う。
庶子を蔑む時にお決まりの「どこのウマの骨ともわからない子供」が使えないのだ。
苦々しく思いながら、
皆、
慎一郎が誰よりも色濃く慎の血を引いていることは認めざるを得なかった。
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