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-1- 慎一郎 十三歳 #2
【5】 夢の終わりと始まり
慎一郎には、
子供の頃から温めてきた夢があった。
きっかけは、
父が買ってくれた絵本。
何度もせがんで、
父母に読んでもらった。
小さな郵便飛行機が、
病気になったお父さん飛行機に代わって仕事をするという話。
郵便物を、
素直にまっすぐ運べばいいのに、
寄り道して遊んでしまうから、
帰りは怖い目に会って、
大変な思いをするというもの。
けれど最後には両親が待つ飛行場に戻って、
元気になったお父さんと一緒に仕事にでかけられるようになってメデタシメデタシ。
この飛行機が、
彼の心に刺さった。
父と母と子供の変哲のない家族像に、
自分の願望を投影していたのかもしれない。
父を助ける子供が自分なのだという自負もあった。
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