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そうしたら。
僕はおしまいだ――
日頃から血の気の薄い顔が、
更に蒼白く、
秋雨の空気に溶け込む。
傍目には、
父母を喪った継子、
哀れな子と映っていたかもしれない。
気が付いたら、
葬儀は全て、
滞りなく済んでいた。
ろくに喉を通らない精進落としを済ませて解放された時、
翌日の来ないことをひたすら祈った。
「ばいばい」と手を振って父母に手を引かれ帰っていく秋良を見送りながら、
夢であってくれればよいと、
願った。
けれど、
自分の指が覚えてる。
解いた胸元のブラウスの蝶結び、
幼い肋骨や下着、
撫でた髪の感触の記憶に嘘はなかった。
父さん、
僕はバカだ。
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