- 3 - 慎一郎 二十九歳

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 そうしたら。  僕はおしまいだ――  日頃から血の気の薄い顔が、 更に蒼白く、 秋雨の空気に溶け込む。  傍目には、 父母を喪った継子、 哀れな子と映っていたかもしれない。  気が付いたら、 葬儀は全て、 滞りなく済んでいた。  ろくに喉を通らない精進落としを済ませて解放された時、 翌日の来ないことをひたすら祈った。  「ばいばい」と手を振って父母に手を引かれ帰っていく秋良を見送りながら、 夢であってくれればよいと、 願った。  けれど、 自分の指が覚えてる。  解いた胸元のブラウスの蝶結び、 幼い肋骨や下着、 撫でた髪の感触の記憶に嘘はなかった。    父さん、 僕はバカだ。
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