- 2 - 秋良 六歳 #2

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 憧れていたお兄さんに少しでも近づきたかった、 重なるものを増やしたかっただけなのだけど。  慎一郎がいない自分の人生はどうなっていただろう。 接点が少なかったらどうだったのか。  分かり切ったこと、 と秋良は思う。  味気のない、 当たり障りのない人生を生きていただろう。  人より、 少しばかりもてていたから、 そこそこ幸せな家庭は築けていただろう。  子供にも恵まれ、 穏やかに人生を送り、 家庭を守っていただろう。  そうならなくて良かった。  乗務前、 ブリーフィングの合間に、 窓から見える空。  ここを舞台に働ける、 私は幸せだから、 と。  
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