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秋良の初恋だった。
年が近くてかっこいい、
素敵な小父さんに憧れる、
無邪気で、
可愛い女の子の振りをした。
そうしたら彼の側にいられる。
合気道の道場では、
ついに一度も手合わせは叶わなかった。
秋良は大学へ進学するまで道場通いを続けた。
後に癇癪を起こした秋良が、
あっさり慎一郎を投げ飛ばすのに成功して以来、
ふたりの間に言葉で解決できない緊張感が流れた時に慎一郎の足は宙を舞うことになるのだが、
習い始めの頃は秋良とはそんな未来が来るとは思わず、
後年、
予見できていれば断じて道場の敷居は跨がせなかったと慎一郎は語った。
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