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慎一郎がまんじりともしない夜を過ごし、
翌日を迎え、
さらに翌日、
もう一日、
と日を重ね、
淡々と重ねる日々を受けながら、
彼女は黙っていたのだろうか、
誰にも知られなかったのだろうか、
と、
おどおどすることもなくなっていき、
父の初七日を迎える。
今では訪ねる父もいなくなった高輪の生家にひとり、
線香を灯す。
両親は、
生前に夫婦位牌を用意していたので、
後で父の命日を記してもらおうと思う。
あの人達は、
この小さな木切れに収まるのを良しとはしないだろうけど。
今の僕には、
ふたりの支えが必要だから。
朝夕、
手を合わせ、
母の月命日に花を供え、
父母に、
そして秋良に詫びを言うのが習慣となった頃、
ひょっこり秋良が、
水流添道代、
つまり彼女の母と来訪した。
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