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知られた?
一挙に緊張感でいっぱいになる慎一郎に、
秋良の母はあっけらかんと言った。
「お家がとても近いのね。
知ってた?」
うんともすんとも言えない慎一郎の返答を待たず、
秋良の母は娘の背を押して彼の前へ促す。
秋良の手には彼女が持つには少し大きめのかごがあり、
中には布巾をかけた器がある。
「顔色がまだ悪いわね。
尾上の小父様のお葬式の時から気になっていたのよ。
食事は? きちんと取っているの? そんなに大きな図体で、
しっかり食べているのかしら」
「それは……」
母の生前は食卓を囲む家族もいたし、
父とふたりになってからも一日一回は食事を共にするように努めてくれていた。
作り手は大概慎一郎だったので、
同じ世代の男子よりはレパートリーも豊富な方だっただろう。
父の死後はぷっつりと作ることもなくなったが、
最低限の食事は欠かさないようにしていた。
父母との約束は、
一角の人間として大成することだったので、
実現させるには腹が減っては何も出来ないから。
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