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- 3 - 慎一郎 二十九歳 #2
痩せているのは今に始まったことではないんですが、
元からなんですが、
と言おうとした彼の視界に、
自分を見上げる秋良の顔が飛び込んでくる。
この年頃にありがちな、
感情が読みにくいことは秋良に限ってはなく、
つまり、
にこにこと、
仔犬がしっぽを振るような可愛らしさで慎一郎を見ていた。
無邪気さに、
言葉を失う。
初めて会った時も思ったが、
「秋」が名前につくにもかかわらず、
春の温かさが漂う。
この笑顔を向けられると、
毒気が抜けてしまう。
特に、
後ろめたさ百倍の慎一郎には。
「だからね、
慎一郎君」
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