- 慎一郎 二十九歳 #3

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 帰り道の話題は他愛無いことばかりだ。 学校のこと、 テストのこと、 今日の稽古のこと、 クラブ活動のこと、 友達のこと……。 当時の慎一郎は、 彼女の両親よりも彼女の交友関係や勉学上の悩みなどに精通していた。 また、 どちらかと言えば寡黙な彼も、 秋良とは不思議と会話が成立し、 途切れることがなく、 たまたまふたりが歩いているところを目撃した悪友たちの目が点になっていたくらいだから、 相当な会話量だったのだろう。    通り道には、 商店街にはありがちな小さい時計店兼貴金属店が軒を並べていた。 秋良はこの側を通ると必ず足を止めてあれこれ飽かず眺めるのが好きだった。
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