- 慎一郎 二十九歳 #3

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 いくつになっても女の子は女と言った、 彼女の父の言葉が思い出される。 女性はアクセサリー類が好きなのだな、 母もそうだった。  目を輝かせて見入る彼女が、 溜め息をついてショーウィンドウから離れたら、 チェック終了の合図。 「気に入ったのはあったのかな」  つい聞いてしまう。 「ううん、 なかった。 キレイだけど、 探しているのは置いてないみたい」 「何を探しているのか、 聞いても?」  大体目星はついている。 赤色の石が好きなのだ。 「内緒」  ふふっと笑む彼女の顔は驚く程大人びている。  彼女が、 自分を見る目も変わっている。  子供の頃のような、 好きや憧れだけではない、 好意以上の好意が、 恋心が芽生えているのだろう。
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