- 慎一郎 二十九歳 #3

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 はにかみを覚える年頃の少女は、 危う気な美しさを持っている。  大好きな小父さん、 お兄さんへの『大好き』が、 変化している、 生長をしている――  慎一郎も鈍くはないし、 秋良のことは憎からず思っているから、 だから、 僕は駄目だよ、 秋良、 と心の中で語りかける。  君が抱いている感情は恋心という衣を纏った親愛の情だ。 単なる憧れだ。  君に相応しい男性がいつか必ず現れる。  その日までの「代用品」ならなってあげられる。  ……相応しい男性?  思って、 胸にちりちりとくる痛みに、 この感情は何なのだろう、 と思う。
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