- 慎一郎 二十九歳 #3

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「好きになって良いのだと伝えた。 ――嬉しそうだったよ」  慎一郎の目から、 涙が一筋、 また一筋、 溢れてきて床に染みを作る。  自分達兄弟は、 打ち解ける日は来ないかもしれない、 けれど、 裕は、 雪解けを待っていたのだ、 父と叔父との。  みんな仲良くして欲しい。  それを言うためだけに産まれてきたというのか、 彼は。 たった三歳、 まだまだ幼い子の人生は。  遺された者達は、 嘆くだけではだめだ。 彼の思いを汲み取らなくては。  けれど、 今日は――無理だ。 だって昨日まで、 普通に元気に生きていたのだから。
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