- 慎一郎 二十九歳 #3

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【7】 夢のはじまり  日本へ帰って、 まず済ませたのは兄夫婦と水流添家へ帰国の報告と挨拶、 預けていた家の鍵の返却、 そして空けていた家の管理の礼。 両親の墓参、 帰国の報告。 そして勤め先となる母校への挨拶だった。  彼に割り振られたのは扶桑館。  校舎の建て替えが進んでいた学内で、 唯一残っている旧い建物。 軋む床が年代を物語るが、 駆け出しの研究者・助手に贅沢は言えない。 それに、 ここはかつて父が使っていた建物で、 与えられた部屋は正に父の研究室があったところ。 自分にとって良い器が与えられたと思った。
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