- 慎一郎 二十九歳 #4

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 少し頬を赤らめ、 次の言葉を口にしようとした彼女に、 割って入るように賑やかな声が人の群と共に押し寄せて来た。   「慎一郎君、 お掃除、 はかどっている?」  この声は、 水流添道代だ。 「相変わらず大きいわね、 少し痩せた? いえ、 太ったのかしら」  こちらは義姉の加奈江。 姪の裕の手を引いている。  馴染みの顔の登場に、 慎一郎は内心でほっとする。  目の前の女性より、 こちらの女性の方が何倍もありがたい。  裕は小学校に上がったばかりで、 まだ人見知りがあり、 二年ぶりの叔父にはにかんだ笑みを見せ、 母の後ろに隠れている。 小声で「こんにちは」と挨拶をする彼女の特長は、 一にも二にもなく、 その姿格好にある。 市松人形が抜けて出てきたかのような、 切りそろえた黒髪に、 和装姿。 赤い鼻緒にこはぜの足袋が似合っている。
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