- 慎一郎 二十九歳 #5

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 慎一郎は一拍遅れ、 彼女を追う。  知られていた、 覚えていた――忘れていなかったんだ。  顔色を失うとは今の自分のことだろう、 滑稽なぐらいに狼狽している。 「ここで」  慎一郎より先に入った書斎で、 彼を迎え入れた秋良は、 くるりと踵を返して対峙した。 「起きた事。 全部は無理だったけど、 思い出してしまったの。 何故、 思い出せなかったのか――わからないけど、 一度気付いたら、 忘れてた頃には戻れない。 だから」  秋良はいらいらとした手付きで、 着ていたものを、 ちぎるように一つ一つ落とし、 彼の前に素肌を晒した。 「私にも、 あの女の人にしたことを、 して」
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