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慎一郎は一拍遅れ、
彼女を追う。
知られていた、
覚えていた――忘れていなかったんだ。
顔色を失うとは今の自分のことだろう、
滑稽なぐらいに狼狽している。
「ここで」
慎一郎より先に入った書斎で、
彼を迎え入れた秋良は、
くるりと踵を返して対峙した。
「起きた事。
全部は無理だったけど、
思い出してしまったの。
何故、
思い出せなかったのか――わからないけど、
一度気付いたら、
忘れてた頃には戻れない。
だから」
秋良はいらいらとした手付きで、
着ていたものを、
ちぎるように一つ一つ落とし、
彼の前に素肌を晒した。
「私にも、
あの女の人にしたことを、
して」
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