- 慎一郎 二十九歳 #5

3/16
81人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
 まだ春と言うには早い頃、 吐く息は白い。  震えは寒さからか、 高ぶった気がさせるのか。  一糸纏わぬ秋良の肢体は、 白かった。  目の前の姿から目が離せず、 慎一郎は秋良の視線を受ける。  見てはいけない、 早く、 彼女に服を着せなくては。 このままでは風邪をひく。  的外れなことを思いつつ、 やはり魅入ってしまう。  彼にとって、 女の身体は物珍しくない。 過去に接した女たちより、 成熟にはまだ遠い、 けれど少女でもない秋良は、 美しかった。 美しく育ったことを悦び、 小父としてより、 男、 雄としての目で見ている自分がいた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!