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慎一郎はロンドン時代のエピソードを聞かせた。
ほんの数日、
相手をした小学生の話、
少し悲しい物語を。
その後、
順当に上の学校へ進学した彼とひょんな事から再会した瞬間、
仁は人を指さして叫んだ、
「タンホイザー!」と。
以来、
彼は慎一郎をそう呼ぶこともあるのだという。
「まさか、
覚えているとは思わなかった」
「でも、
高校生でしょ。
慎一郎さんが何故彼らの講習を?」
「友人の高等部の教師から相談を受けた。
カリキュラムの枠を越えた質問をする生徒がいて、
対応に困っている、
と。
難しい問題にチャレンジする姿勢は素晴らしいけれど、
他の生徒の手前、
彼ばかり相手にし続けるのも難しいから、
と」
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