- 4 - 均衡 #2

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「それで慎一郎さんのところへお話が来たんですね」 「私でも応えられる内容だからね、 今は。 が、 いずれ他の講師なり教授にバトンタッチすることになりそうだな。 うちの学校に置いておくのはもったいないぐらいだ。 大学は専攻に強いところか国公立を考えるように言っているよ」 「あら、 ご自身はどうでしたの?」  慎一郎は苦笑で応える。  幼稚舎から通う学校へ大学まで残った彼だ。 さすがに大学院は公立へ進んだが、 留学の後、 就職先に選んだのは白鳳。 彼は自覚している、 心から母校を愛していると。 余所へ移ることは一切考えていないだろう。 だから、 こだわるあまり昇進が遅いのだ、 と父さんが言っていたわ。 年の巡りで教授層が厚く充実した白鳳では、 これ以上の教員の増員や補強はあり得ないと。
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