- 4 - 均衡 #2

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 ――怒らせた? 私?  秋良は心が落ち着かない。 「反対の立場に立ってみたまえ。 私や君の身内が勤務中の君に気安く声をかけたり、 君を訪ねてギャレーに入り込んだらどうするか。 私の立場も分かるはずだ」  全くもってその通り。 「ごめんなさい」  これは本格的に怒らせてしまったかもしれない。  今度こそ、 禁足決定かも――  肩から力を落として、 秋良は俯く。  再度、 向かい側から大きく溜め息。  そして、 洋酒の銘柄をぽつりと口にする。 「違うかな?」と。  違っていない。 大当たりだ。 「良く解りましたわね……」 「あれだけ派手に香らせておいて、 解らない方がおかしい」
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