- 5 - 転換点

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 かつてモデルだったというソニアが説明する着物の柄は正確そのもので、 彼も知っている成人式の日に着た振り袖だった。 あでやかな朱の地色に古典柄が彼女にとても似合っていた。  袖を振りながら、 慎一郎にくるくると見せて回る秋良は可愛かった―― 「あ、 裕を怒らないでよ、 今日もね、 何度もアキラにシンイチローに言うな、 って何度も言ってたから。 でも、 私には言わなかったからね、 ホントは誰かに伝えて欲しかったんじゃないのー? って思っちゃったの」  だから、 叱るなら私を、 とソニアは反省の色を微塵もさせずにケロリとしている。 「だってー、 キモノ、 キレイだったけど、 アキラはキレイじゃなかったもんねー。 いつもの感じじゃないし。 疲れてたし。 あれじゃー、 だめよねー。 女はキレイになれる人の為におしゃれしないと。 それにミアイ? 知らない人と会ってすぐにケッコンの話するって、 私、 信じられない。 日本人、 ワカンナイねー。 あんなの、 アキラらしくないよね、 無理して。 カワイソウ」
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