25人が本棚に入れています
本棚に追加
- 均衡 #4
疲れた――と、
慎一郎は思う。
誰か彼女を奪ってくれないか。
僕の目の前から連れ去ってくれ。
そうすれば、
僕も諦めがつく。
……いや、
そうだろうか。
現実になったら、
焦り、
苦しくてたまらなくなるのは目に見えている。
上司から秋良をご子息に紹介してくれと頼まれた時、
バカ正直に秋良に伝えた自分に嫌気がささなかったか。
秋良を愛しているのに。
あの人の隣に誰か別の人がいたら、
奥様がいたら忘れられたのに、
と秋良は思う。
そんなこと望んでいないけれど、
でも、
今のままは辛い。
もう、
若い頃のように、
彼にぶつかる勇気もない。
最初のコメントを投稿しよう!