- 5 - 転換点

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 蛯名に水を向けられても、 宗像は全く応じない。 「何とも思ってない女だから、 上司のご機嫌取りに、 人身御供として差し出すのも抵抗ないだろうさ、 高遠、 お前は嫌な奴だな」  元々シニカルでしつこく食い下がるのが珍しくない宗像だが、 あまりの熱弁に面食らう慎一郎に、 蛯名が耳打ちをした。 「奴は秋良君に岡惚れして、 告白して、 振られているのだ」  と。  好きな人がいるから、 とやんわりとお断りされ、 慎一郎を指すことはわかりきっていたから、 彼が相手ならと引き下がらずを得なかった思いは忘れこそすれ消えていない、 いったところか。 そういえば、 彼のパートナーは、 面差しがどことなく秋良に似たタイプだったな、 と慎一郎は思う。
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