- 5 - 転換点

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【1】 友、 来る  その日、 かつての『イチロー・カルテット』が慎一郎の研究室に集っていた。  皆、 それぞれの学校で教鞭を執り、 着実に社会的地位を築いている。  まとめ役として明朗な田中一朗は、 どの場であっても常にリーダーシップを発揮する。  先頃帰国したばかりで、 減らず口が大変多く、 シニカルな宗像一郎は、 切り口鮮やかに議論を咲かせる。  蛯名一良は言葉数は少ないが的確な言説を弄する。 宗像の良き論客だ。  何色にも染まらないようでいて、 頑迷なところがあるのは慎一郎。 物腰が柔らかいので保護色のように紛れてしまうが、 これと決めたら生中なことでは動かない。 腰の重さは四人の中では一番だった。
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