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- 5 - 転換点 #2
と、
入ってきた時と同じくらい唐突に立ち去った。
キャットウォークを歩く時のように、
強い歩調で。
鋭く、
鮮やかな光が去った後は色が沈む。
田中、
宗像、
蛯名が二の句を告げずに言い淀んでいると、
時を計ったように慎一郎を呼ぶ校内アナウンスが流れた。
アナウンスは告げた、
横山が呼んでいると。
「噂の横山さんのお呼び出しだな」
蛯名は言った。
今日は何て日だ。
大切な本の出版の初の会合中に、
横山との確執話が入り込み、
ソニアが来訪し、
秋良の結婚話が出た。
てんこもりだ。
今は、
上司の横山のお召しに従わなくてはならない。
「話、
先に始めておいてくれ」
三人の了解を得るまでもなく、
慎一郎は上司の元へと急ぐ。
眼鏡を胸ポケットに収め、
ひとつに束ねた長い髪を翻して。
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