- 5 - 転換点 #2

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 武は横山へ言い、 横山は首肯する。 「どれ、 僕は彼らにハッパ掛けに行ってくるかな。 ではね、 また今度」  言って武は退室した。  残された慎一郎と横山は、 しばし、 どちらが語るでもなく対峙した。  呼ばれた意向を聞くべきか、 ここは待つか、 出方を伺っていた頃、 横山は語り出した。 「イチロー・カルテットと呼ばれていたのかね」 「は?」 「武先生から伺った。 今度、 彼らと共著で本を書くそうだな」 「はい」 「田中君と蛯名君は都内で、 宗像君は確か海外から帰ってきたばかりで、 それぞれ教授職を勤めているとか」  三人が揃った席で言われた事にも繋がる。 慎一郎だけ助教授で格が揃わない。 それはわかりきったこと。 彼ら三人より、 慎一郎が一番据わりの悪い思いをしている。
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