23人が本棚に入れています
本棚に追加
「横山先生、
お呼びとのことで――」
「もう二十年以上になるのか――」
慎一郎の言を、
聞こえていないように横山は話の主導権を握る。
だから、
横山とは折り合いが悪いんだ、
と慎一郎は内心で舌打ちする。
人の話を聞かず、
一方的に話をし、
噛み合わない。
「恩師から国際電話が来た。
当時、
自分はアメリカで授業を持っていた。
日本にはしばらく帰っておらず、
現地の様子はほとんど伝わっていなかったから、
恩師の電話には驚いたし、
嬉しかった。
大変お世話になった、
師匠と言ってもいい方だったから、
不義理を詫び、
話せるのを楽しみだと伝えた。
師は、
話題豊富で、
刺激を受ける唯一の人だったから。
いつもの論戦が聞けるのかと思ったが、
そうはならなかった。
病気だと言う声の衰えはひどいものだった――」
最初のコメントを投稿しよう!