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慎一郎などいないかのように、
話は続く。
「溌剌とした師が、
電話の向こうで言うのだ、
自分は息子の夢を打ち砕いた、
我を通して、
伸びる芽を摘んでしまった、
と。
そして、
自分には寿命がない。
若い彼が同じ道を歩んでくれたら、
教えたい事、
伝えたい事が山程あるのに、
まだ彼は高校生、
それも叶わない、
と。
しわがれた声でおっしゃる、
無念だ、
と」
横山は鋭い目で慎一郎を見据える。
「私の恩師は、
尾上慎。
君の父上だ」
慎一郎は驚きの表情を浮かべる。
その反応に満足したかのように横山は続けた。
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