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カタン、
と金具が触れ合う音がした気がしたので、
秋良は視線を階下へ落とした。
自宅の前で、
門扉に手を掛けている人の姿に目が釘付けになる。
日本人としては並外れた長身の、
彼女が知っている人といったらひとりしかいない。
何もかも許せる唯一の人。
カーテンを握り締め、
知らず名を口にしていた。
「慎一郎……さん?」
あなたなの?
彼女の声に応えるように見上げた相手は、
一瞬、
驚いた顔になる。
門扉に手を掛けた慎一郎は、
秋良の視線から目が離せない。
何度見たかわからない、
物問いた気な慕わしさを語る瞳。
今も、
その目で僕を見てくれるのか。
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