- 転換点 #3

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 胸中には温かい感情しか浮かばない。 彼の表情が緩み、 柔らかい視線を浮かべた。  そして、 彼は彼女に手を差し延べる、 「秋良」と。  彼女は弾かれるように身を翻した。  飛ぶ勢いで階段を下り、 素足のままで外へ出た。  扉の向こうには門扉を抜けて立つ彼がいる、 秋良は飛び出した勢いのまま、 彼の広げられた腕の中へ飛び込んだ。  迷うことなく、 慎一郎は秋良を力一杯抱きしめる、 身体に伝わるお互いの四肢と温もりを離すまいとするように。 そして、 勢いのまま、 唇を重ねた。 包むように、 深く。 言葉では足りない想いを伝えるような口付けを。  生まれて初めて男の唇を受け、 絡みつかれながら秋良も必死にしがみつく。 鼻腔をくすぐる、 彼女が大好きな彼の匂いが彼女を包み込む。
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