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胸中には温かい感情しか浮かばない。
彼の表情が緩み、
柔らかい視線を浮かべた。
そして、
彼は彼女に手を差し延べる、
「秋良」と。
彼女は弾かれるように身を翻した。
飛ぶ勢いで階段を下り、
素足のままで外へ出た。
扉の向こうには門扉を抜けて立つ彼がいる、
秋良は飛び出した勢いのまま、
彼の広げられた腕の中へ飛び込んだ。
迷うことなく、
慎一郎は秋良を力一杯抱きしめる、
身体に伝わるお互いの四肢と温もりを離すまいとするように。
そして、
勢いのまま、
唇を重ねた。
包むように、
深く。
言葉では足りない想いを伝えるような口付けを。
生まれて初めて男の唇を受け、
絡みつかれながら秋良も必死にしがみつく。
鼻腔をくすぐる、
彼女が大好きな彼の匂いが彼女を包み込む。
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