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「どうしてこちらに……?」
両頬を掌で愛しそうに抱えられ、
見つめられながら秋良は問う。
「君との約束を果たしに来たんだ」
「……約束……」
「偉い学者になると――忘れたかい?」
柔らかく微笑む彼。
初めて見るような笑顔だ。
温かくて慕わしい。
「いいえ、
あなたがイギリスへ行く前の」
「そう、
空港で、
高校生だった君とした約束。
忘れたことはなかったよ、
君は――」
「言いました、
私、
あなたを待ってます、
と」
「長い間待たせてしまった。
やっと、
君を迎えられる」
彼女の髪を、
背を、
撫でる掌は温かく強い。
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