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「君には、
ひどいと言われ通しだ」
慎一郎は苦笑する。
「本当は、
君が気に入りそうな、
気の利いたものを買ってやりたかった。
でも、
昨日は間に合わなかったから、
形見を持ち出したんだが……。
故人の品が嫌なら改めて……」
『買ってあげる』確かに昔、
何度も言ってくれていた。
本当に覚えてくれていたんだ。
「イヤです」
秋良は、
わざと口を尖らせて言う。
「これじゃないと、
イヤ。
返せと言われても返しませんから」
「君の姑になったかもしれない人の品でも?」
「尚更、
返す気はありません」
すっと腕を伸ばし、
改めて指を彩るリングに見入る。
迷わず左の手の薬指にはめてくれた、
彼の気持ちが嬉しかった。
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