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その時はたくさんの口付けを君に贈ろう。
若い頃の激情とは違う、
暖かな悦びに満たされる時を重ねていこう、
ふたりで。
僕たちは夫婦になるのだから、
と。
その夜、
ふたりは時も忘れて語り合って過ごした。
翌朝、
彼女の母が客間で見たものは、
柱にもたれて微睡む慎一郎と、
布団の中で寝こける娘。
その距離は見事に部屋の端から端まで離れていた。
道代が襖を開ける気配に即目覚めた彼に、
「本当に、
あれでいいの? 慎一郎君、
後悔はない?」とこぼした。
お世辞にも麗しい寝姿とは言えない秋良の様子に、
「寝相が良くないのは、
子供の頃から知っていますから」
と、
至って平静に返す慎一郎。
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